読書日記 (2001年まで)

2001年12月までに読んだもので、
メールマガジンや、「思いつくまま」に、
引用した図書をまとめした。

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目次

1 ●電脳国文学
2 ●宇宙船地球号
3 ●放浪の天才数学者エルデシュ
4 ●グーテンベルグの謎
5 ●深海底の科学
6 ●「旧跡発掘ねつ造」事件を追う
7 ●生命と地球の歴史
8 ●生命と地球の共進化
9 ●科学の終焉
10 ●はなの友三
11 ●ワンダフル・ライフ
12 ●カンブリア紀の怪物たち
13 ●ロケット開発「失敗の条件」
14 ●フルハウス 生命の全容
15 ●ダーウィン以来
16 ●ひとはなぜエセ科学に騙されるのか
17 ●悪人正機
18 ●老人力
19 ●宇宙には意志がある
20 ●僕らは星のかけら
21 ●考える力、やり抜く力 私の方法
22 ●宇宙の構造
23 ●縛られた巨人
24 ●転回の時代に
25 ●情報の文明学
26 ●インターネット的
27 ●オイラーの贈物
28 ●恐竜が動き出す
29 ●チンパンジーの心
30 ●私のエネルギー論
31 ●天文学者の虫眼鏡
32 ●宇宙からの贈りもの
33 ●時間の矢・時間の輪
34 ●京都帝国大学の挑戦
35 ●マザーネイチャーズ・トーク
36 ●月をめざした二人の科学者
37 ●「科学者の楽園」をつくった男
38 ●フェルマーの最終定理
39 ●死体を捜せ


1 ●電脳国文学
 漢字文献情報処理研究会編「電脳国文学 インターネットで広がる古典の世界」(ISBN4-87220-041-1)を読んだというより、斜め読みです。
 現在の第一水準と第二水準の漢字数の不足は、林望氏のエッセイで読んだことがありました。林氏は、その不足分を自分の工夫で乗り越えていましたが、今や、「今昔文字鏡」を使えば、約9万字の漢字をパソコンで、入力、印刷できるのです。
 著作権に抵触しない文献(大部分の古典はそう)がデジタル化されて、インターネットで公開されているという実態があります。あるべき姿なのですが、私が全く知らなかった世界での動きでした。感動しました。
 早速、知り合いの山頭火を愛する国文の大学4年生のSさんに紹介しました。彼女はいまどきの女学生ですから、インターネットやE-mailは当たり前の人ですから、それなりの使い方をしていくでしょう。でも、この本の存在は知らなかったようです。
 国文学において、私は単なる読者の一人に過ぎませんが、限りなくアナログに見える世界でも、やはり電子化の波は進んでいます。限りなくアナログという見方は、私の偏見でした。国文学だから、という先入観によってみてはいけなかったのです。そういえば、経済学では統計学やカオスを研究するし、農学部林学科で資本論を勉強している友人がいました。
 私は、前から、学問もさまざまな分野がクロスオーバーしたり、バックグランドの違う人が別の分野に大いに参入する必要性を、よくいっていたくせに、盲点でした。この本は、そんなことを気付かせてくれるまさに「目から鱗が取れた」一冊でした。
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2 ●宇宙船地球号
 バックミンスター・フラー著「宇宙船地球号 操作マニュアル」(ISBN4-480-08586-6 C0498)
 あまりにも隠喩。あまりにも個性的。つまり、私には一読しただけでは、理解不能であった。
 非常に有名な書物の文庫版での新訳での本である。でも、私は、後ろについていたフラーの年譜とその注釈に、より興味を覚えた。つまり、この本の内容ではなく、フラーの生き方が興味深いのである。
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3 ●放浪の天才数学者エルデシュ
 「放浪の天才数学者エルデシュ」(ISBN4-7942-0950-9)
 彼は83歳まで現役数学者として、一日19時間、数学のことを考えつづけました。生涯論文を書きつづけて、その論文数、1500篇といわれているほどの大数学者です。彼は数学者仲間の家に、下着とノートの入ったスーツケール一つ持ってひょっこりとあらわれては、「わしの頭は営業中だ」といって、しばらく滞在して数学の議論をして、またひょっこりと次の数学者の家に去っていく。そんな奇矯な数学者を、仲間たちは愛し、守ってきました。研究者冥利に尽きる人生をおくっていたエルデシュに、なれはしませんが、なんとなく憧れを感じます。
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4 ●グーテンベルグの謎
 高宮利行著「グーテンベルグの謎 活字メディアの誕生とその後」(ISBN4-00-000444-1)
 慶応HUMI計画で、副題のほうの内容を期待してたのですが、グーテンベルクの印刷の時代に関係したものに主力が置かれてかかれていまた。このような本は途中で止めるとが多いのですが、面白くて一気の読みきってしまいました。現在は、デジタルメディアが爆発的に普及しだことによって、印刷の発明と同じほどのメディア革命の時代であるといわれています。そのとき、現在の書誌学(?)では、グーテンベルクをどのように見ているのかを垣間見ることができました。
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5 ●深海底の科学
 藤岡勘太郎著「深海底の科学 日本列島を潜ってみれば」(ISBN4-14-001814-3 C1344)をやっと読みました。実は著者の藤岡氏とは懇意で、この本も3年ほど前に頂いたものです。本当はもっと早く読んで、どこかの雑誌に書評でも書かなければならなかったのですが、ついつい今になりました。海洋の科学は、技術の進歩が不可欠です。宇宙の科学と同じで、膨大は税金を使います。ですから、国民のコンセンサスを得なければいけない巨大科学の一つです。本書のように一線の研究者が普及書を書くことによって、コンセンサスを形成する大きな力となるはずです。私が一番印象的だったのは、「なぜ深海に潜るのか」という問いに対する藤岡氏の答えが、知的好奇心を満たすために「そこに海があるから」とされたことでした。私もフィールドサイエンスをする研究者の一人として、同じ感想をもっています。
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6 ●「旧跡発掘ねつ造」事件を追う
 「立花隆サイエンスレポート「旧跡発掘ねつ造」事件を追う」(ISBN4-02-257601-4)というのを読みました。
 立花隆氏の知的好奇心とジャーナリストとして相手にこびることなく悪いことは悪いという姿勢は、大いに学ぶところがあります。それと、彼の博識は努力の賜物であるということを著書の各所述べられているので、私も見習うべく努力しています。
 新聞で断片的にはこのニュースを読んではいたのですが、この本でまとまった形で事件の全貌を知ることができました。この事件は考古学学界全体に暗い影を投げかけました。それに、ねつ造がおこなわれたのが、ニュースで明らかになった2箇所だけとするのか、それとの藤村氏がかかわった遺跡すべてを黒としてしまうのか、が大きな分かれ目です。2箇所だけとする、被害は最低限ですが、その他の部分では常に灰色という不安が付きまといます。すべて黒とすると、日本の大部分の前期・中期旧石器時代の遺跡は消えていくかもしれません。しかし、日本の考古学の面目復旧にはその程度の覚悟が必要なのかもしれません。これは、他の学界でも起こりうることかもしれません。いやもしかするとどこかで誰かが・・・
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7 ●生命と地球の歴史
 丸山茂徳・磯崎行雄著岩波新書「生命と地球の歴史」(ISBN: 4004305438)
 近年、生命と地球の関係が詳しく研究され、非常に密接に関係していることがわかってきました。地球環境の大激変があると生命は簡単に大絶滅を起こします。しかし、生命が死に絶えることは今までありませんでした。環境の大激変の後、生命は大発展します。そして今までにない仕組みや性能をもった生命が誕生し、地球を制覇しだします。多細胞生物、脊椎動物、陸上生物、哺乳類なども、環境変化と大絶滅の成果なのかもしれません。
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8 ●生命と地球の共進化
 川上紳一著NHKブックス「生命と地球の共進化」(ISBN: 4140018887)
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9 ●科学の終焉
 J・ホーガン著「科学の終焉(おわり)」(ISBN4-19-860769-9)を遅ればせながら、読みました。著者は、一人の人間が、把握できるような科学的な発見はもはやないであろうということを、存命の名のある科学者、哲学者などからインタビューして書いたものです。内容には、承服できるところと、疑問を感じるところがあります。私自身は、科学は終わってないと思っています。そして、一人の人間が理解できる範囲で、それももっと面白いことが一杯これからも見つかると思っています。根拠はありません。一種の願望です。
 この本のもう一つの面白いところは、1990年代前半に存命であった、一流の研究者にあってインタビューしているために、本でしか知らない著名人たちの、生きている姿を、ホーガンの言葉を通じてですが、見ることができるところです。そして、そのような迫力のある、あるいは癖のある著名人たちを相手に、ホーガンは怯むことなく(少し怯んだり、びびったりしていることもある)、自分の聞きたいことや反論をするところに、アメリカの知識人の強さと、個人主義に根ざしていると思われる人間として対等であるという姿勢が感じられる本でした。
 最後に、アメリカではこのようなハードな内容の本が売れるということに感心します。この本は、日本でも、かなり売れたようで、文庫本化と続編の翻訳も出されています。しかし、本当に読んだ人、本当に読み終えた人、本当に面白いと思った人は、どれくらいいるのでしょうか。このようなハードな書籍をすんなり受け入れているアメリカの知的階級の多さに圧倒されます。
 日本の出版業界では、例えば、数字の多用した本は売れないから数字は使わないようにとか、科学、中でも地球科学関連の書物は売れ行きが良くないから、敬遠するとかいう風潮があります。でも、アメリカでは、このようなハードな内容の本が数多く出されていることをうらやましく思います。例えば有名な古生物学者のグールドの書く、エッセイや専門書は、決して読者や市民に迎合、妥協していません。地質学の専門家でもある私でも難しいと思われるないようを書いて、どうどうと出版し、受け入れるアメリカ人にその底力を感じます。アメリカの科学あるいは知識人には、まだまだ終わりはないと思いました。これは私の思い過ごしなのでしょうか。
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10 ●はなの友三
 清水深志著「はなの友三 城川町奇譚」(ISBN4-925082-10-8 C0093)
 愛媛県東宇和郡城川町を舞台にした小説。友三という少年が、城川町の自然の中で成長していく過程が描かれている。城川町出身の著者が描く不思議で面白い世界。公会堂付属の一室を官舎代わり一人で住んでいる風変わりで評判の老女高校教師(友三は戸沢白雲斎と呼ぶ)が勉強について語っている。
「勉強には、一年生の範囲も二年生の範囲も無い。小学生の漢字や大人の漢字がある訳でもない。必要な時に必要な人が、其の必要を満たす為にするのが勉強。必要を満たす以上の勉強が学問。その学問の道へ入るのが初歩の言葉が中学での勉強。平方根は数学の言葉。言葉を覚えなければ話も出来ない」
非常に含蓄のある言葉である。
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11 ●ワンダフル・ライフ
 S. J. グールド「ワンダフル・ライフ」(ハードカバー版ISBN4-15-203556-0、文庫版ISBN4-15-050236-6 )
 モーリスとグールドの本は、少し前に、あい前後して読んだ記憶があります。グールドが書いたのは1990年で、モーリスは1997年です。ですから、当然モーリスの方が最新情報が盛り込まれ学問の進歩も加えられています。モーリスは、グールドの本をバージェス化石への普及の功績は称えていますが、「いくらか話にまとまりが無く冗長である。
この本の結論の多くは、まだ検討の余地がある。」と批判的です。
 でも、なぜが私には、グールドの本がすごく印象に残っています。
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12 ●カンブリア紀の怪物たち
 S. C.モーリス「カンブリア紀の怪物たち」(ISBN4-06-149343-4)
 その後ほぼ同じ内容を修正、加筆したS. C. Morris著「The Crucible of Creation The burgess Shale and the Rise of Animals」(ISBN:0-19-286202-2)があります。バージェス化石やカンブリア紀初期に関する、最新の情報が書かれています。
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13 ●ロケット開発「失敗の条件」
 五代富文・中野不二男著「ロケット開発「失敗の条件」」(ISBN4-584-12002-1 C0253)
 五代富文は言わずと知れた日本のロケットの中心人物、中野不二男は、サイエンスライターとして科学技術に詳しい人物の著者である。彼らが対談で、ロケットを題材にして、失敗とその対処の仕方に対する考えを述べている。当然、その内容は、行政批判繋がる。でも、アメリカやロシアなどロケット先進国例をみれば、失敗を教訓とすべきことがいくらでもあるのに、行政の官僚的やり方に非常なロスを逆に強いられているとこが浮き彫りにされている。
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14 ●フルハウス 生命の全容
 スティーヴン・ジェイ・グールド 「フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説」(早川書房 刊; ISBN: 4152081783 )
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15 ●ダーウィン以来
 スティーヴン・ジェイ・グールド著「ダーウィン以来−進化論への招待」(ISBN4-15-050196-3 C0145)
自然淘汰の基本
 「1 生物には変異がある。そしてその変異は(少なくとも部分的には)その子にうけつがれる。
2 生物は生き残れる以上に多くの子や卵を産む。
3 平均すれば、その環境によって好ましいとされる方向に最も強く変異してる子孫が生き残って繁殖するだろう。したがって、好ましい変異は、自然淘汰によって個体群の中に蓄積されていくだろう。
1、2:否定できない事実、3:そこから導かれる一つの帰結」
常識
 「常識は科学上の洞察にとっては非常にへたくそな案内人にすぎない。なぜなら、常識は、裸の王様を前にした小さな子供の生まれつきの正直さを反映するよりも、文化的な偏見を表現していることのほうが多いからである。」
刈り込み原理
 「われわれは、生物が多様である理由を考える際に、「刈り込み者(クロッパー)」(植物食であれ動物食であれ)が導入されるとその地域にいる種数は減少してしまう、と予測するのではなかろうか。要するに、もしある動物が以前にはその動物にとって処女地であったところから食物を取りいれるとすれば、彼らはそこの生物の個体数を全体として減少させ、一部の種を完全に除去してしまうにちがいない、と考えるわけである。
(略)刈り込み者はえてして豊富な種を餌食にするものであり、結果として一部の種が独占的に君臨する能力を制限し、他の種のために空間を開放する。(略)適度に刈り込まれた系は最高度に多種多様であり、種数は多いが種の個体数は少ない。言葉をかえていえば、生態系のピラミッドに一つの新しい段階を導入することは、そのすぐ下位の段階を多様化する結果となることが多い。」
人間の大きさ
 「人間が現在機能しているように機能するためにはちょうど今のような大きさでなければならない、と、もっと強く論じ主張することができす。(略)人間の技能や行動はうまいぐわいにわれわれの大きさに調和しているのだ。」
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16 ●ひとはなぜエセ科学に騙されるのか
 カール・セーガン「ひとはなぜエセ科学に騙されるのか」(上巻ISBN4-10-229403-1、下巻ISBN4-10-229404-X)
 カール・セーガンが、エセ科学といわれるUFO、宇宙人誘拐、交霊、超能力、ミステリーサークルなどを細かく調べ、論破していく。しかし、セーガンは、科学では割り切れない人間の心の中にある問題にたどり着き、それは、それで、充分考えていく必要があることを述べている。セーガンの絶筆になるのだろうか、迫力を感じる。そして、科学に背を向けている一般大衆に向かって、科学の重要性をわかりやすく、でも、真摯に説いている。そして、もちろん科学の弱点もしっかりと説いていす。素晴らしい本である。久しぶりに感動した。永久保存版である。
 エセ科学には、「トンデモ話し検出キット」を使えといってる。それは、今まで長年科学が行ってきた方法である。その例として、裏づけを取れ、議論のまな板にのせろ、権威主義に陥るな、仮説を複数立てろ、身びいきするな、定量化しろ、弱点を叩きだせ、オッカムのかみそり、反証可能性などである。
 「科学は、両刃の剣なのだ。その恐るべき力を手にするからには、政治家をはじめ、誰もが新たな責任を負わなければならない。もちろん、科学者の責任はことに重大だ」
 「おそらに科学と似非科学のいちばんはっきりしたちがいは、科学のほうが似非科学よりも、人間の不完全さや誤りやすさをずっとよっく認識している点であろう。」
 「「権威者の言うことは信用するな」というのは、科学の偉大な戒律の一つである。(もちろん、科学者も霊長類なので集団内の順位には弱く、いつもこの戒律が守れ得るとは限らないのだが。)」
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17 ●悪人正機
 吉本隆明著(聞き手糸井重里)「悪人正機」(ISBN4-255-00091-3 C0095)
 吉本隆明といえば、私より少し上の世代では、学生運動の思想的巨人の一人だったのです。その人が、糸井重里との対話で、いろいろなテーマについて語っています。ユニークな考えです。でも、今や、吉本ばななの父親というほうが通りがいいかもしれません。
 「頭と本と抽象的思考で長くやっていれば、学者になれるんです」
 「手を使わなければなにおできないんですよ。頭だけ使って、手で考えないようなのはだめなんだってことはわかってるんです。」
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18 ●老人力
 赤瀬川原平著「老人力」(ISBN4-480-03671-7 C0196)
 この本では、老人力について書いてある。私にも、近頃よく起こるのだが、若い頃にはしなかったミスや、記憶が引き出せない事態 など老化や、ボケといいたくなるような出来事がたびたび起こる。今まで、年のせいだから、と諦めていたのだが、この本のおかげで、前向きに、それをエネルギーやプラスとみなすという考え方があることを知った。
 同病相憐れむということではなく、マイナスとしか考えられないことを、プラスやパワーとして考える姿勢に安心した。私も見習いたいものだ。誰もがマイナスと考えることを、プラスと考えるという姿勢、その姿勢は大いに学びたい。物忘れ、繰り言、など、年齢と共に衰える人間としての能力を、否定的視点ではなく、「老人力」というあたらな視点で肯定的に捉える視点が面白い。もともとは冗談から始まった言葉らしいが、それが現在社会にマッチし、流行したらしい。でも、自分にそのような兆候が現れることによって、この「老人力」の意味が身にしみてわかる。そんなことを感じさせる本であった。
 だが、私に、老人力パワーをどのように、どの程度発揮できるかが問題である。そのためには、若さのパワーがいるかもしれない。でも、若さのパワーに頼るのは、真の老人力ではない。さてさて、どうしたものか。こんな悩みも老人力かもしれない。
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19 ●宇宙には意志がある
 桜井邦朋「宇宙には意志がある」(ISBN4-19-891518-0)
 「人間原理」を新しい論じたもの。
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20 ●僕らは星のかけら
 マーカス・チュン「僕らは星のかけら 原子をつくった魔法の炉を探して」糸川洋訳(ISBN4-89585-934-7)
 原子の起源を、研究史から解き明かした本。
 ホイルが「人間原理」を持ち出した科学的根拠が紹介されている。これで、人間原理の必然性が理解できた。単に、人間本意に出された訳ではなかったのだ。そのてんでは、桜井氏の著書は物足りなかった。
 欧米のサイエンスライターの書く、科学啓蒙書はレベルが高い。でもこれは、重要である。
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21 ●考える力、やり抜く力 私の方法
 中村修二著「考える力、やり抜く力 私の方法」(ISBN4-8379-1872-7 C0030)
 「今、一番ノーベル賞に近い男」中村修二著「考える力、やり抜く力 私の方法」(ISBN4-8379-1872-7 C0030)を、昨日買って、一気に読んでしまった。それは、自分と同年代(彼は1954年生まれ)で、似たような境遇におかれたとき、彼の取った行動、判断が、私のものと似ているためである。もちろん、彼は、青色発行ダイオードに端を発する一連の研究を民間企業に在籍中に独力でつくり上げた。
 その成果は、私には遠く及ばないものだが、私は私なりに、自負できる成果を残してきた。それを、自身として新天地を目指す気持ちは同じである。そんなことを考えながら、読みきってしまった。
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22 ●宇宙の構造
 村上光太郎「宇宙の構造 自然の仕組み」(ISBN4-88689-001-6)
 あまりにもユニークな。そのため、自分と波長が一緒ならいいのだが、会わない。従って、あまりにも独善的に見える。
 でも、その志は学ぶべきところあり。
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23 ●縛られた巨人
 神坂次郎著「縛られた巨人 南方熊楠の生涯」(ISBN4-10-120912-X)
この本は、10年くらい前に一度読んで途中で止めたものを、また、インターネットの書店で探し出して、カナダにいるときに読んだものである。非常に強烈な生き方をしたした人である。そして、いき方の下手な人であったよう泣きがする。でも、生きるのに上手下手もなく、精一杯に生きるしかないのかもしれない。熊楠はそれを全うしたということであろう。熊楠の場合、どうしてもその研究者としての能力より、その生き方がユニークなのでそちらに目を向けてします。そして長男の不幸。そして、生涯を通じて自由奔放さをもち、その結果としての不遇(これは周りの勝手な思い込みかもしれない)。など、まさに、小説向きの人生だろう。面白かった。
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24 ●転回の時代に
 池内了「転回の時代に 科学の今を考える」(ISBN4-00-006538-6 C0340)
本書は、岩波月刊雑誌「科学」に連載されたものである。ときどき目にしていたが、断片的に読むので、池内氏が書いているという印象しかなく、内容については記憶が無い。でも、単行本として出版されると、池内氏の考えがよくわかり、非常に面白かった。同じように感じること多々あった。そして、やはり物理や天文に関する内容は面白い。そして、寺田寅彦に関する感じも似ている。
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25 ●情報の文明学
 梅棹忠夫「情報の文明学」(ISBN4-12-203398-5)
 梅棹氏の情報科学に卓見。古典的論文の再現。
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26 ●インターネット的
 糸井重里「インターネット的」(ISBN4-569-61614-3)
 糸井重里は、インターネットを非営利的活動と通じて、非常に可能性があることを実践的にしめている。この本はその思想的根源に触れた本である。インターネット的とは、インターネットとは少し違うニュアンスを持たせている。その鍵となる言葉が、リンク、シェア、フラットそれに加えてグローバルというものである。納得のいく部分と、ぴんとこない部分が混在している。
 なお、この本は、糸井氏がインターネットでゲリラ的サイン会をしたときのサインが書かれている。
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27 ●オイラーの贈物
 吉田武「オイラーの贈物 人類の至宝eiπ=-1」(ISBN4-87525-153-X)
 個性豊かに書かれている。でも、数学の系統的教科書としては、素晴らしい。永久保存。
 吉田氏の主張している本の書き方に賛成。私もこのような本を書くことを目標とする。
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28 ●恐竜が動き出す
 笹沢教一「恐竜が動き出す」(ISBN4-12-150014-8)
CGで恐竜を動かすための入門書。
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29 ●チンパンジーの心
 松沢哲郎「チンパンジーの心」(ISBN4-00-600021-9)
 チンパンジーを通じて繰り広げられるヒトとの比較認知科学。でも、彼は、チンパンジーが好きだという気持ちがにじみ出ている。チンパンジーは松沢氏の共同研究者なのだ。久しぶりに、面白い研究を見た。
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30 ●私のエネルギー論
 池内了「私のエネルギー論」(ISBN4-16-660141-5 C0295)
 宇宙科学者が考えたエネルギー論である。しかし、池内氏は今や、科学全般のエッセイ評論から、自分の生活から発するさまざなま考えを述べている論客である。家の新築にあたっては、エネルギー問題や老後の問題など、身の丈にあった生き方と考え方をされている。
 「現在知られている物体間に働く力は四つである。それを発見された歴史的な順で列挙すると、ニュートンが発見した「万有引力(重力)」、クーロンが発見した「電気力」(さらに、ファラデーが発見した「磁気力」も含めて「電磁力」と呼ぶ場合もある)、湯川秀樹の予言した「核の力」、フェルミが予言した元素を崩壊させる「弱い力」となる」
万有引力(重力):天体の世界:天体現象:天体力学、宇宙物理学、一般性相対性理論
電磁気力:原子、分子、高分子、結晶、生物、惑星:燃焼、電池、光:物性物理、化学、生物学、地球物理学
核の力:原子核、素粒子:原爆、水爆:核物理学、素粒子物理学、核エネルギー学
弱い力:原子核、素粒子:花春と治療:核物理学、素粒子物理学、放射線物理学
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31 ●天文学者の虫眼鏡
 池内了「天文学者の虫眼鏡 文学と科学の間」(ISBN4-16-660060-5 C0295)
 池内氏が大学生のころ、3冊の小説を自主出版していたが、文学の道は諦めたことがかかれている。そのように池内氏は天文学者でありながら、文学を解する。さまざなま文学に触れながら、科学的解釈を述べるという、寺田寅彦を髣髴とさせる。最近、池内氏の本をよく読むが、非常に彼は、科学者でありながら、わかりやすい文章を書ける人である。
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32 ●宇宙からの贈りもの
 毛利衛著「宇宙からの贈りもの」(ISBN4-00-430739-2 C0244)
 毛利衛氏、誰もが知っている、2度の宇宙体験をした宇宙飛行士です。彼が、宇宙で感じたことを書いたもので、連続する空間意識や連続する時間意識として、ユニバソロジという考え方を提唱しています。
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33 ●時間の矢・時間の輪
 スティーヴン J. グールド「時間の矢・時間の輪 地質学的時間をめぐる神話と隠喩」(ISBN4-87502-162-3 C1040)
 グールドの硬派の科学史の本である。そして、私が専門として地質学の大いなる大家たちの古典的著書に関する論評である。17世紀のトマス・バーネットの「地球に関する神聖なる理論」、18世紀のジェイムズ・ハットン「地球の理論」、19世紀のチェールズ・ライエル「地質学原理」を中心として、当時の地球と時間に関する考え方をグールド独自にまとめたものである。どれも読んだこともなく、教科書でしか知らない古典をグールドが読み解いている。
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34 ●京都帝国大学の挑戦
 潮木守一「京都帝国大学の挑戦」(ISBN4-06-159896-3 C0137)
 東京帝国大学(以前は単に帝国大学だった)のライバルとして、京都帝国大学は明治13年に、創設された。この本は、法学部(当時は法科大学であった)について述べられている。そして、京都帝国大学の試みは挫折した。しかし、京都帝国大学の目指した教育のあり方は、今日でも通じるものである。
 京都帝国大学の目指した教育とは、詰めこみの知識偏重の東京帝国大学式ではなく、考えることを重視した、ゼミや卒論を中心とした教育であった。
 この著書では、岡村司の「京都法学会雑誌」に寄せた、次ぎの文章を引用して、
「大学教育の要は、あらゆる材料を教授するに非ずして、難解の理を了解せしむるに在り。学生の記憶力を助長せずして、その判断力を養成するにあり。」「なるべく講義時間を減少して自由研究の余裕を与え、優悠カン養して自修自得せしむるにあり。わが京都法科大学の制度は、実にこの精神にもとづき作られたり。」
京都帝国大学のポリシー示した。
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35 ●マザーネイチャーズ・トーク
 立花隆「マザーネイチャーズ・トーク」(ISBN4-10-138721-4)
 立花隆が、年二回のナチュラリスト向けの写真雑誌「マザー・ネイチャーズ」で連載された連続対談集である。サル学者・河合雅雄、動物行動学者・日高敏隆、惑星科学者・松井孝典、免疫学者・多田富雄、精神分析学者・河合隼雄、植物学者・古谷雅樹、微生物学者・服部勉との対談が収録されている。内容に一部古い部分が生じているが、知らない分野を知ることや研究者の側面を見えたため、面白かった。
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36 ●月をめざした二人の科学者
 的場泰宣「月をめざした二人の科学者 アポロとスプートニクの軌跡」(ISBN4-12-101566-5)
 宇宙開発の歴史を概観したもの。ソ連のコロリョフとアメリカのフォン・ブラウンの宇宙に開発にかけた生涯。
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37 ●「科学者の楽園」をつくった男
 宮田親平著「「科学者の楽園」をつくった男 大河内正敏と理化学研究所」(ISBN4-532-19062-2 C0123)
「 理研」と約されてきた理化学研究所だが、私は良く知らなかった。半官半民あるいは民間の研究所ではないかとうっすらと考えていた。しかし、この本を読んで、理研の理想とそしてコンチェルン化や戦争協力などの時代の流れ、を知ることができた。そしてそこから輩出した研究者は今の日本の科学の基礎を築いたということも。そして、現在科学技術庁、今は文部科学省に属する研究所となっている。そして、SPring8のこの研究所が作ったということも知った。そして、なにより殿様大河内正敏の理想と手腕、そして彼が作り出した「科学者のたちの自由の楽園」をうらやましく、そして頼もしく感じた。
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38 ●フェルマーの最終定理
 サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」(ISBN4-10-539301-4 C0098)
 先日、遅ればせながらこの本を読んだ。一時、新聞紙上を賑わしたフェルマーの定理の証明にいたる話である。非常に面白かった。数学に関する話題を難しい数式をあまり使わずにわかりやすく説明している。
 私にとってもう収穫は、情報科学に関連して記号論理学を勉強している時、に疑問に思っていたことが解決したことである。フレーゲの「算術の基本法則」の完成間際に、仲間であるバートランド・ラッセルがその理論致命的欠陥を見つけたということまで知っていたのだが、その内容を知らなかった。それを知りたかったのだが、この本で知ることができた。
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39 ●死体を捜せ
 布施英利著「死体を捜せ」(ISBN4-04-347801-1 C0195)
 途中まで読んだ。途中まで読んで、やめたのは、彼の文章についていけなかったからだ。科学的なエッセイのつもりで読んでいたのだが、文学的、芸術的な書き方がされていて、私の肌にあわなかった。彼の文章には、論理的飛躍があり、その時に理解できなくなり、それが何度も続くと、不快になっていくのである。
 布施氏は、私と同じ町に住んでいて、月1回の有料のメールマガジンを発行していて
私もそれを購読している。そのメールマガジンでも同じような飛躍が時々あった。今回、はじめて彼の著作を読んだのだが、やはり、ついていけなかった。
 同じ論理の飛躍でも、小林秀雄の論的飛躍の場合は、私には心地よかった。でも、布施氏のは、だめだった。これは、多分、肌があうか、あわないかの違いであろう。
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